脊椎疾患とは

脊椎疾患

脊椎とは背骨のことで、これは頸椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、仙椎(5個)、尾椎(3~5個)で構成されている部位のことを言います。ここで起きた異常や症状、病気のことを脊椎疾患と言います。

この脊椎の真ん中にあるのが脊柱管で、この管の中を脊髄が通っています。ちなみに脊髄には脳からの指令を伝える神経、感覚の情報を脳へ返す神経、心臓や消化器などの運動を調節する神経といったものが走っています。このようなことから脊椎が損傷する、病気にかかるといったことが起きると重症化するリスクが高いので、少しでも気になることがあれば、お早めにご受診ください。

なお同疾患でよく見受けられる症状では、交通事故によるむち打ち症(頸椎捻挫)をはじめ、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎分離症、頸椎症などです。診察の結果、医師より脊椎疾患との診断を受けたら治療が行われますが、その場合は運動器リハビリテーション(牽引療法、理学療法、温熱療法、装具療法)や薬物療法などから、患者様にとって適切とされる治療法を医師が選択して行います。

脊椎疾患による代表的な疾患

むち打ち症や寝違えなどの頚椎捻挫

主に交通事故などによるむち打ち症や寝違えといったことが原因で首が痛む、あるいは動かないという症状がある場合、頚椎捻挫と診断されます。

むち打ち症とは、自動車に乗車している際に追突・衝突・急停車が起きた、もしくはスポーツの最中に首に不自然な力が加わるなどして、首が鞭のようにしなってしまうことで、首回りがダメージを受けている状態を言います。この場合、首の椎骨が損傷するケースがほとんどです。

また寝違えは、睡眠中に無理な姿勢を無意識的にとった際に首の筋肉に負担をかけたことで、筋肉痛のような症状が出ている状態です。あまりにも痛みが激しくて、首が回らないこともあります。同症状につきましては、安静にしておくか、消炎鎮痛剤などを使用していくことで、数日で痛みが軽減することが大半です。ただ痛みが一週間以上続いているのであれば、頸椎椎間板ヘルニアなど他の病気が原因ということも考えられます。

椎間板ヘルニア

椎骨と椎骨の間をつなぐ、円形の軟骨組織のことを椎間板と言います。これは、ただ骨をつなぐという役割だけでなく、クッションの働きをすることでも知られています。ただこの椎間板が、加齢(老化)、外傷、度重なるスポーツや重労働による酷使によって、一部が変性するようになると本来の位置から椎間板が飛び出してしまいます。
そして椎間板の変性によって脊髄や神経根が圧迫されるようになると痛みやしびれのほか、運動制限や凝り固まるという症状が起きるようになります。これが椎間板ヘルニアです。

同疾患は、症状が発生する椎骨の場所によって診断名が違ってきますが、多くは人体の構造的に負担がかかりやすいとされる頸椎(頸椎椎間板ヘルニア)や腰椎(腰椎椎間板ヘルニア)になります。

主な症状ですが、頸椎椎間板ヘルニアの場合は、痛みやこりが頸部や肩に現れるようになります。また脊髄や神経根も圧迫されていると、手全体や脚にしびれやまひが起こるほか、神経痛などが伴うこともあります。一方、腰椎椎間板ヘルニアの場合は、腰痛を感じるのが一番ですが、脚に痛みやしびれが起きるとされる坐骨神経痛も現れます。このほか症状が進行すれば、歩行障害や感覚障害などが出ることもあります。

脊柱管狭窄症

椎骨の中にある脊柱管には、脊髄や馬尾神経が通っているのですが、何らかの原因によって脊柱管が狭窄してしまうことで、これら神経が圧迫されてしまい、痛みやしびれなど様々な症状が起きていると脊柱管狭窄症と診断されます。50~80歳くらいの中高年男性がよく発症すると言われています。

この脊柱管が狭まる原因として、よく挙げられているのが加齢です。この場合、椎骨の変性や椎間板の膨らみ、黄色靱帯が厚くなるといったことが引き金となって脊柱管が狭窄されるようになります。これが症状を発症させるメカニズムです。

発症しやすい部位については、椎間板ヘルニアと同じく、頸椎や腰椎です。頸部脊柱管狭窄症の場合は、強い痛みやしびれが腕から手指にかけてみられるほか、腕が重だるい、手指に力が入らずによく動かせないといった症状が認められます。腰部脊柱管狭窄症の場合は、主に腰にある脊柱管が狭まるようになるのですが、これによって腰が痛む、あるいは重く感じるといった以外にも、脚の痛みやしびれなどが現れることもあります。

なお脊柱管狭窄症は、加齢が主な原因とされていますが、若者世代であっても重労働や重いものを持つなどの職業で腰部などを酷使していた、あるいは何らかのきっかけで腰を痛めてしまったという場合でも起きやすいので注意が必要です。

腰痛・頚部痛

腰痛とは

日本人全体の7割の方が経験しているという腰痛ですが、痛みの原因について画像検査(X線撮影など)をするなどして特定できる腰痛というのは、全体の約2割程度とされ、これを特異的腰痛と言います。つまり原因がはっきりしている腰痛のことで、主に腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、脊椎外傷、関節リウマチなどによる腰の痛みとなります。この場合、原疾患の治療が優先されます。

一方、残りの8割ほどの患者様が悩まれている腰痛とは、非特異的腰痛と呼ばれているもので、これは原因が特定できない腰痛になります。そのため、骨、関節、筋肉、筋膜といった部位での異常が必ずしも原因となるわけではなく、日頃の生活習慣やストレスなど心理的要因によって発症することもあります。

この非特異的腰痛は、大きく急性と慢性に分けられ、一般的によく知られているぎっくり腰は、急性の非特異的腰痛になります。なお、ぎっくり腰は、前にかがんだ状態で重い荷物を持つ、姿勢を急に変える(腰をいきなり捻る、あるいはベッドから勢いよく立ち上がる など)といったことなどで、何の前触れもなく発症します。主な症状は、腰に激痛が走る、腰椎での運動が制限される、前方への屈曲運動が困難になるといったことが挙げられます。なお、急性の非特異的腰痛とは、発症から1ヵ月未満の腰痛のことを言います。

また、慢性の非特異的腰痛とは、発症から3ヵ月以上続いている腰痛のことで、この場合は腰全体に痛みやだるさ、重みといった症状がずっと続いていているほか、抑うつ状態や身体表現性障害など精神的な症状がみられていることもあります。

治療に関してですが、非特異的腰痛ではまず痛みを取り除くようにします。よく使用されるのがNSAIDsなど痛みを抑えるのに効果があるとされる薬物療法や神経ブロック注射です。それでも症状が強い場合は安静に過ごすようにします。なお経過については、身体を動かしていた方が良いという面もありますので、可能な範囲で腰痛体操などストレッチを開始していきます。

ちなみにぎっくり腰を発症しても、その大半は1ヵ月ほどで軽快していきます。ただ、慢性の非特異的腰痛で心理的要素も確認されているのであれば、抗うつ薬や抗不安薬による薬物療法のほか、非薬物療法による認知行動療法(物事の考え方やとらえ方(認知)、また問題となっている行動を見つめ直す)も用いられます。

頸部痛とは

頸部とは、いわゆる首のことで、首や首近辺に痛みの症状がある場合を頸部痛と言います。

ただ漠然に痛みがあると言っても、首全般が痛む、首の側面が痛む、首前面もしくは首後面が痛むなど、痛み方というのは様々で、また肩こりといった場合でも首が痛むことがあります。

なお頸部の痛みのタイプは、主に3つあるとされています。ひとつは、過緊張が首の筋肉に起こることで発症する痛みです。2つ目は、頸椎の椎間板などが変性することで脊髄が圧迫されるなどして起こる頚椎椎間板ヘルニアなどによる痛みです。そして3つ目の痛みに関しては、運動器の異常ではなく、内科疾患が引き金となって発症する頸部痛のことで、狭心症など循環器疾患によって首が痛むことがあります。

一口に痛みと言っても、首全般が痛い、側面が痛い、前面あるいは後面が痛いなど様々なタイプがあり、肩こりで首が痛くなることもあります。なお痛みについては、主に3つに分類されると言われています。ひとつは首の筋肉に過緊張が起きることで生じる痛み(肩こり など)です。もうひとつは首の椎間板などが変性することで脊髄が圧迫されることなどで起きる痛み(頚椎椎間板ヘルニアなど)です。3つめは内科疾患で起きる場合で、狭心症など循環器の病気で頸部痛がみられることもあります。

頸部痛がみられる主な疾患

頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症、肩こり、頸椎捻挫(寝違え、むち打ち症)、頚椎症性脊髄症、胸郭出口症候群、頸部椎間関節症 など